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最期は「いつもの場所」で

 病気で先が長くないとしたら、どこで最期を迎えたいと思いますか。


 最期を自宅で過ごし、旅立たれた男性がいました。「胃がんで1か月もつかどうかと言われました。本人が家に帰りたいというので退院することにしたけど、大丈夫でしょうか」。最初に奥さんにお会いした時の言葉です。ご本人も病気のことを理解していました。


 往診医と私たち訪問看護師、介護用ベッドなどの環境を整え、男性は退院しました。食事量は少なくなっていましたが、支えがあるとトイレまで歩けました。


 退院翌日に訪問すると、「やっぱり家の空気はいいね」とご本人。「昨日はいつもの食卓に座って、一緒に食事したんですよ」と奥さんもうれしそうでした。2人の表情はとてもリラックスしていました。


 翌日、「イスに座るのはしんどい」と男性はテレビの前の座椅子で過ごしました。そこも、“いつもの場所”だったそうです。「家の音が聞こえるのはいいね」と話していました。退院から1週間後、男性は静かに息を引き取りました。


 退院前、「家に帰ってから気持ちが変わることがあります。その時々、どうすればいいか相談していきましょう」と奥さんには話していました。私たちは、ご本人の希望、それを叶(かな)えたいという奥さんの思いを支えようと考えていました。痛み止めの量を調整し、ほとんど苦痛なく過ごすことができました。奥さんもそれを見て、自宅でも大丈夫と安心できたそうです。


 考え方も家庭状況も様々です。望んでも難しいこともありますが、自宅で最期までという希望を持つ方を支えるパートナーとして、訪問看護師の存在を知ってもらえたらうれしいです。


〔2013年2月26日 読売新聞〕


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